中国史の論文やレポートを書くために

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ここでは、東洋学(中国学)のレポートや論文を書くための、資料収集の段取りについて説明しています。

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研究状況を知る

東洋学(ここでは狭義の中国学と置き換えても構いませんが)関連のレポートや論文を書く場合、執筆に至るまでに幾つかの準備作業が必要となります

レポートや論文を書く以上、既に「論文のテーマ」がおおまかにでも決まっているか、或いは指定されているはずです。

まず、「テーマ」について書かれている先行研究を、ある程度見ておく必要があります。

先行研究を調べるには、幾つかの方法があります。

例えば、専門用入門書には、各テーマ毎に「とりあえずこれを読んでおけ!」的な研究が紹介されています。

まずは、下の二種類程度は押さえておきましょう。ただし、何れも時間の経過と共に情報が古くなっていきますので、必要に応じて下の「最新の研究情報を知るには」で紹介した方法で、新しい研究状況を把握しておくことも重要です。

『中国史研究入門』上下
山川出版社の二冊本です。各テーマ毎に分けられた研究状況と、論文の紹介や史籍解題の部分とに分かれています。
読むべき論文を中心にコンパクトにまとめてありますので、初学者には最適でしょう。新しい情報を加えた修訂版も出ていますが、やや情報としては古くなりつつあります。
『アジア歴史研究入門』
今は無き同朋社から出ていた五冊+別冊(索引)のシリーズです。
上の山川のが、中国史中心に書かれているのに対し、こちらは東洋史全般にわたって書かれています。
山川が東大系統の執筆陣に対して、こちらは京大系の執筆陣がメインを張っていますので、両系統の学風の違いを感じることも出来ます。
こちらも大御所を押さえていますが、第三冊の「目録学」の項目は、中国の所謂漢籍を扱う上でのよい入門書になるかと思います。是非読んでおきましょう。

最新の研究状況を知るには

入門書は、情報が整理されていてわかりやすい反面、発行されてから年月が経っていますので、最新の研究は網羅されていません。従って、その方面は別な方法で探す必要があります。

『東洋学文献類目』
京都大学人文科学研究所付属漢字情報研究センターが毎年発行している冊子です。年度毎の東洋学関連の文献が網羅(と言っても、編集の過程で収録されない物もありますが)されています。きちんと調べたいならば、必ずこれを参照しましょう。
別に述べますが、オンライン版(当Webサイトによる解説)もあります。但し検索できるのは書籍版より範囲が狭くなります(データ反映のタイムラグ)。
『史学雑誌』
史学研究会発行の歴史学関係の雑誌ですが、毎年第五号に掲載される「回顧と展望」には、前年度の研究状況が紹介・批評されています。最近の研究状況を把握するためにも、数年前位までは遡って見てみましょう。
『史学雑誌』には、回顧と展望以外にも、号毎に日本史・東洋史・西洋史の研究論文が纏めて紹介されています。こちらも是非参考にしておきましょう。
また、山川出版社から、回顧と展望を纏めた単行本も発行されています。
『中国関係論説資料』
論説資料保存会の手になる各分野毎にその年の関係論文を影印してまとめたシリーズで、中国学向けは分野ごとに四つに分けられています。但し、単著・共著所収のものや、東方学や東洋学報等の専門誌の論文は収録されていません。
最近はPDF版も発行されています。
論題・著者名検索用のソフトウェアも発売されています。衣笠図書館で利用可。但しデータがちょっと古め。
論文自体に注目
初めに「まず先行研究を参照しましょう」と書きましたが、専門家の各論文もその例に漏れません。従って、論文の本文や注釈には、それらには注釈がつきものです。そこには論文執筆者のフィルター(評価)がかかっていますが、紹介されている論文をたどり、その論文に紹介されている論文を…の手順を繰り返す事で、先行研究を大体把握する事ができるかと思います。

資料を収集する

テーマが決まり、先行研究も大体把握したら、次に自分なりに立論の土台となる材料を集めましょう。

材料には、資料となる書籍(含漢籍)や写真、各種先行研究(論文や単著)、ちょっとした調べ物のメモ等が該当します。

書籍(漢籍)を調べる

文献資料を利用して執筆を行う場合は、用いる文献資料の素性を知っておく必要があります。

まず、その文献資料がどのような内容であるかを調べます。

解題

解題には、以下のような書籍を利用するとよいでしょう。

『中国史研究入門』上下

『アジア歴史研究入門』

この二冊は、先行研究以外にも、代表的な文献資料の解題を行っています。

繰り返しになりますが、『アジア歴史研究入門』第三冊所収の「目録学」は、漢籍を扱う上でのよい入門書なので。是非読んでおきましょう。

『中国史籍解題辞典』

中国書籍輸入販売店の燎原書店から出版されている辞典です。

中国史を研究する場合に用いる事が多い書籍について解題・版本よ研究論文の紹介を挙げています。

アジア歴史辞典よりも新しく、平凡社や小学館の百科事典よりも詳しいので、古典文献を取り扱う場合は、第一に呼んでおくべきでしょう。

各社出版の漢文大系

明治書院・集英社・角川・学習研究社等からは、漢文のシリーズものが出版されています。それ等の中には序文にその書籍の解題や版本の紹介をしているものがあります。上記の入門や辞典類の解題が、書幅の都合で短いのに対し、それよりはかなりの長文で書かれているものが殆どです。但し、古典文献が殆どです。

翻訳本や研究書

ある書物を翻訳しているものや、それを対象とした論文や単著がある場合、書物の序や研究史の紹介で、対象書物の解題がなされている場合が多いです。

特に、中国から出版されている標点本の冒頭に序文が付いている場合は、解題がついている場合が多いです(二十四史にはないですけど)。

版本の調査

文献資料を利用する場合に、テキストとしてどのようなものがあるか、その中でどれを用いたらよいのかを調べます。それが版本の調査になります。

用いるべき版本が判明したら、それがどこにどのような形で所蔵・或いは利用可能かどうか調べます。

これらについては、上で紹介した解題本に版本の種類や善本の紹介がされている場合が多いです。

それ等に載っていない場合は、各種漢籍目録を参照しましょう。

オンライン化されている漢籍目録

東洋文化研究所所蔵漢籍目録データベース(BIG5)

全國漢籍データベース(京都大学人文科学研究所他)(utf-8)

デジタルテキストの調査

Kanhoo ! Text Search(デジタル化された漢籍のサーチエンジン)

図書の調査

Runners

WebCat(全国の研究機関の図書館を網羅)

参考文献

漢籍目録の見方や版本の種類について調べたいときは、以下の本を参照しましょう。

『目録学』
倉石武四郎述 汲古書院 1979
『中国目録学』
清水茂著 筑摩書房 1991
漢籍を理解したいならば、この二冊辺りを押さえておけばよいでしょう。特に、倉石氏のこの本は必読です。2002年に再版されています。
『漢籍版本のてびき』
魏隠儒・王金雨著:波多野太郎・矢嶋美都子訳 東方書店 1987
『漢籍解題』(長澤規矩也著作集2)
長澤規矩也 1985
『漢籍版本入門』
陳国慶著:沢谷昭次訳 研文出版 1984
『漢籍輸入の文化史―聖徳太子から吉宗へ―』
大庭脩 研文出版 1997
漢籍等、中国の書物の歴史や版本の種類を知りたいならば、これらの本を読むとよいでしょう。
『文字の文化史』
藤枝晃 講談社 1999 講談社学術文庫
『敦煌学とその周辺』
藤枝晃講話 大阪府 1999 対話講座なにわ塾叢書
書写手段(筆等)と書写材料(竹簡や紙等)の変化に伴って、漢字がどう書写されてきたかを知るには、藤枝氏のこれらの著作を読みましょう。特に前者は名著の誉れが高い本です。

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