山川世界史
『中国史2』
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池田温 ///他編 『世界歴史大系』所収 1996 \5800(税別) 御存じ「歴史の山川」が送る、世界史概説書の中国史部分、それの第二巻です。一巻の執筆が遅れているために、二巻からの発行となったそうですが・・・ ちなみに、全五巻の予定です。
本巻では、三国〜唐までを取り扱っていますが、このシリーズは、大学生以上を対象に、一般の人にも現在の歴史研究の成果をアピールする目的で作られています。ここでは、まさに最先端の中国史研究の一部を見ることが出来ます。最新且つ最良の三国〜唐の概説書の一つと言っても過言ではないでしょう。
三国部分では、政治・社会制度・文化を中心に、後漢末と南北朝を橋渡しする存在としての三国時代を解説しています。その内容は非常にボリュームがあります。
ただ難点は、本書序章でも書いているとおり、「図版が一切無い! 」点でしょうか。まあ、これに関しては、他にも見るべき物がありますので、あまり評価を下げる対象にも爲らないですね。
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画像が語る
中国の古代
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著:渡部武 平凡社 イメージリーディング叢書 1991 \2900(税別) この本は、中国古代(両漢〜三国)までの文化・風俗を、画像石・漆器等の考古資料を基に復元しようとする試みを、豊富な画像資料と共に書物に纏めた物です。その意味では工具書のコーナーで挙げた『漢代の文物』に似ていますが、こちらの方が入手しやすいですし、文化・風俗に的を絞って書いてある分、より一般的だと思います。
しかし、一般書の皮を被っていますが、内容は詳しく、よくこれだけのスペースにあれだけの内容を詰め込めるなあと感心してしまいます。
著者は、中国古代農事暦や農業そのものに造詣が深く、本書でも特にこの辺りに関しては非常に充実しています。
これは、「買い! 」だと思いますが、いかがでしょうか?
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三国時代の
戦乱
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著:狩野直禎 中国史叢書 新人物往来社 1991
三国〜西晋〜東晉にかけての代表的な戦いを、その時々の時代背景を交えながら解説した書物です。
著者は後漢〜三国時代を扱う方で、私も昔授業をとったことがあります(でも一回も出席しなかった・・・)。 内容は、簡潔な中にそれなりの内容を詰め込んでいます。系図等も交えて解説をしていますが、惜しむらくはもう少し戦闘状況図等があっても良かったかなあ、と思います。
巻末に年表が付いていますが、これは年表の形式で、事件の簡単な説明をしていますので、なかなかお奨めですよ。
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『三国志演義』
の世界
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著:金文京 東方選書25 東方書店1993 これは、三国時代について書かれた本とは違いますが、大変に役立つ本ですので、紹介します。
本書は基本的に、『三国志演義』を取り扱った本です。
演義の成り立ち(『三国志』がどう『三国志演義』に変わっていくのか)を説明するのが、本書の主な内容です。 『三国志演義』には「三」がキーワードである、という半ば意表をつく立ち上がりから、史実から演義へ、羅貫中について、演義の人物像の形成や、これまで余り知られていなかった『花関索伝』等もきちんと採り上げられています。
おもしろいのは、『三国志演義』の当時に於ける出版競争が多彩な版本を生み、それが現行本を生み出す道程と爲ったことを論じている点です。
他にも色々と興味深いところがあると思いますが、それは見てのお楽しみと言うことで・・・
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学研歴史群像シリーズ
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このシリーズは、『三国志』が好きな人なら大抵持っていると思います。
値段も安く、また図版・解説も豊富で、コストパフォーマンスは一番かもしれません。
※執筆陣も、見る人が見れば「おお! 」となる位、有名な人が書いていたりします。
例えば、『三国志』上巻には、城郭研究者の杉本先生・南朝貴族制研究者の中村先生等が執筆。 ただ、歴史系・文学系両方の人を交えて執筆している為か、編集のコンセプトが少々曖昧になってしまうのは、やむを得ない処でしょうか?
但し、これを卒業論文等の資料に使うのは、絶対にやめた方が良いでしょう。一般書はスペースの都合もあり、執筆者は内容を薛略して書くものです。当然この文章の背景には、それなりにきちんとした研究が背景にあるわけで、それを探して持ってくるのが当たり前です。どうしてもその人の論文がなければ別ですが、これを参考文献に持ってくると、先生に笑われますよ!
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西晉の武帝
司馬炎
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著:福原啓郎 中国歴史人物選3 白帝社1995 本書は題名の通り、三国時代を終わらせた西晋の初代皇帝、司馬炎を主人公としています。
しかしその内容は、司馬氏が魏の権力を握る嚆矢となる司馬懿に始まり、彼の息子司馬師・司馬昭と続く政権に筆を進め、表題になる司馬炎時代の事績は、全体の二割ほどになっています。
しかし、記述が魏末〜西晋にかけての司馬氏政権全般に亘っていますので、この時代の優れた概説書と言っても過言ではありません。
一般書を中心として、『三国志』を扱う場合には、孔明が死ぬか蜀が滅びるとそこでおしまい、という場合が多いのではないでしょうか。その為、この辺りは案外知られていません。それを補う上で、本書は非常に有益な著作と言えるでしょう。
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読み切り
『三国志』
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著:井波律子 筑摩書房1989 著者は、筑摩版全訳『三国志』の共訳者の一人です。現在でも、中国史の様々なエピソードや、中国的思考の紹介を熱心にされていますので、一般にはよく知られていると思います。
本書は、後書きに見られるとおり。1988/1-12まで、毎週北国新聞に連載された原稿に加筆訂正した物です。
内容は、歴史的時間軸を基本として、そこに三国時代を彩る英雄豪傑のエピソードを配し、新聞連載という限られたスペースにも拘わらず、エピソードを交えながら簡潔に記しています。正に「読み切り」の名に相応しいと言えましょう。
三国時代そのものに興味を持った方には、初めて読む本としてお奨めです。「俺は『三国志』についてよく知っている! 」と豪語される方には少し物足りないかもしれませんね。
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親魏倭王
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著:大庭脩 学生社1971 著者は木簡研究家として著名であり、現在大阪の「近つ飛鳥博物館」の館長をしておられます。
この本は、邪馬台国の卑弥呼が貰った称号「親魏倭王」を表題としています。これだけだと巷に溢れる邪馬台国本の一つと誤解されてしまいそうですが、本書の神髄は別にあります。
それは、3〜4世紀にかけての、魏呉蜀&遼東公孫氏という四国関係中での邪馬台国の位置づけ、卑弥呼が貰った制詔や魏の倭人感・卑弥呼の使者難升米が貰った官職についての考察など、多岐にわたります。
卑弥呼は孔明と同時代に生きた人ですが、歴史を並行的に見ると、思わぬ人物同士が同時代に生きていて、時に驚かされます。
発行が古い本なので、入手しづらいと思いますが、その価値は今でも普遍でしょう。
※個人的には、猛獲なんかより遙かに独立政権と言える体制を作っていた公孫氏を反映して、ゲームなんかでも四国体制を反映して欲しいと思うのですが、なんせマイナーだからね・・・
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