地下都市にて
カイマクル地下都市にて
(図は非常用扉)

◎一日カッパドキア(買い物三昧の日とも言う)

 起きる。昨日プールで泳いだせいか、よく眠れた。しかしまだ眠い。干していた洗濯を見る。上着類はそこそこ乾いていたが、下着はまだである。多分夕方には乾くだろうと思いそのままにする。朝の食事もバイキング。朝からスウィーツを喰う。むちゃくちゃ(コンデンスミルク系だな)甘いが、平気で喰う。慣れである。人間そんなもんだろう。

 今日は、奇岩で有名なカッパドキア地方を回る。途中でお約束のトルコ石屋・絨毯屋・陶器屋を巡る予定だ。私はこの手の土産物屋タイアップが大嫌いだ。大抵現地旅行社やガイドと結託していて、それぞれマージンがあるので、ろくなもんじゃない商品を高く売るのが相場だ。従って非常に気分が悪くなる。前に中国に行ったときもそうだった。ここは市職員の観光ガイドだったので、行く土産物屋が市直営だった。まだ観光慣れしてないせいもあるのか、こちらをバカにしているか、お世辞にも良い品物とは言えなかったぞ! 後で行った上海の方がよっぽどいい物を売っていた。

 実はカッパドキアに来る前に、既に革製品の店によっている。日付が何時だったか忘れた(確かパムッカレへの移動中だったはず)ので、ここに書くが、暑かったのを覚えている。なんか最初に従業員が演じる革製品のファッションショーを見せられ、その後革ジャン等を「どうですか〜?」 と進められる。まあよくある手口である。いくらトルコ人が商売上手といっても、貧乏旅行に近い新婚夫婦(その他)に、十万円近い革製品を真夏に買えと言ってもそうそう買わんぞ! これが真冬だったら違うかもしれんけど、真夏に革ジャンはねえ・・・ まあ、革のサンダルとか、ベルトとかあったら事情は違っているかもしれないが。その辺りはまだまだ修行が足りないようだ。やっぱり人を見て売る物きめんといかんよ。うん。

 大分話がずれてきたが、カッパドキアである。ここは、かの『ムー』読者ならばよく知っている、奇岩のある地形で有名なのだが、別に超古代文明やUFOの発着場など無いのであしからず。先ず最初にカイマクルに行く。今日のメインが奇岩見物ではなく、買い物にあるのを予感させるような地名だ。(笑) ここには地下都市がある。説明がガイドブックや現地ガイドによって若干違うが、要するにその昔迫害者(ローマ皇帝やアタナシウス派やイスラム等)から、少数派のキリスト教徒が身を守るために、字面に穴を掘って隠れ済んでいたところである。と言っても、岩盤は凝灰岩のため柔らかく、なんと地下八階、大体六十メートルは掘り進んでいるのだそうな。実際ここには、数千人が暮らしていたらしい。見学できるのは地下四階までだが、空調に気を使って作られた構造や、存外地上より涼しかったりするのは驚いた。しかし、敵の侵入を拒むための、狭く低い通路(絶対腰を悪くするぞ!)や、快適な生活環境を保つために、トイレが一番下層に作ってあるのには、地下空間ならではの不自由さも十分想像させる。

 途中何回か滑りそうになったが、無事に出る。案内板がなかったら絶対迷うぞ。あそこは。車の置いてあるところに行く途中、オルハンが他ツアーのガイド(女性、しかも美人)と親しげに会話をする。彼は商売柄、あちこちに知り合いが多いが、あのお姉ちゃんには、肩に手を回すなど、親しさの度合いが違う。同行の皆もチェックを入れていた。やるな、オルハン。


 

 

鳩の谷からの遠望
鳩の谷より遠望
(だったはず)

 

聖グレゴリオ
聖グレゴリオ
(蛇の教会にて)

 

◎まずはトルコ石屋

 地下都市の後は、トルコ石屋である。途中、高原の何もないところに刑務所があったりする。これだと脱走しても、人家のあるところにたどり着くのが一苦労だ。トルコ石屋に着く。ここも廻りに何もない。遠くに先ほどの刑務所が見えるくらいだ。観光客の為だけの施設であるところがもろわかりである。取り敢えず中に入って説明を聞く。店員が怪しげな日本語を喋る。上手いもんだ。商売熱心である。店員がトルコ石の説明を始める。「産地には何々があって、トルコのが一番いい。」 まあありがちな口上である。トルコのには金が混じっているそうだ、黄鉄鋼じゃないのか? これ(鉱物には疎いが、帰国してから辞典を見ると「トルコ石はトルコで取れない。中に鉄が含まれていることもある。」 のだそうな。買ってしまった物はしょうがない。)。取り敢えず聞く。次は偽物と本物との区別講座。「偽物はセラミックなので中が白い! 本物は中まで青い!」 そうな。他の人が選んだ偽物を割る。確かに白い。次に本物だ。私が割る石を指定することになる。当然、一番金らしき物が多いのを選択する。店員がいやがるが、え〜うるさい。結局割った。中まで青い。しかし、金は中には含まれていない? どういうことだろう? よくわからないので突っ込みはしない。

 さあ、商売の時間だ。適当にうろつく。店員に捕まる。気が付くとトルコ石のカフスが手元にある。値段は言うまい。思ったより安いのか? これ。宝石もさっぱりわからん。偽物か本物かも不明だ。まあ、町中で偽物掴まされるより安いだろうと思って買う。しばらく使って白くならなきゃ、本物だと思えばいい。我ながら疑い深いやつである。おなじ店に銅器が売っていた。こっちのデザインは結構気に入ったので、花瓶とミルクピッチャーを買う。客に出したら怪しまれそうでいい。

 トルコ石屋を出る。次は鳩の巣と呼ばれる谷間を望む。ここも奇岩に穴を開けて住んでいた所である。こちらも1900年代初頭まで人がいたそうだから驚いた。鳩の巣穴も多くある。鳩の巣という名前はそれに因んでいる。どうやら鳩の糞をブドウ畑の肥料にするためらしい。ブドウはキリスト教には欠かせないアイテムだ。葡萄酒はキリストの血だからねえ。ブドウというと、ブドウ棚からぶら下がる姿を連想する私にとって、ここいらのブドウは、一見すると背の高い雑草に見えてしまった。これだと遠くからは雑草と区別つかないから、隠れ住む人にとっても栽培しやすいのかもしれない。追っ手がブドウの木だと気づけばおしまいだが(多分知っているだろうけど)

 次に行くのはギョメレの野外博物館。ここも先ほどの鳩の巣と同じく、奇岩に穴を開けて住んでいた所である。教会の遺跡が多いので、纏めて博物館になっているようだ。中世の絵画資料としてもなかなか貴重みたいだ。写真を撮る。一応フラッシュ禁止なので、日本から持ってきたASA800のフィルムを使う。左の写真は、蛇の教会で撮ったものだ。その時係りの人が何か言ってたが。オルハンに聞いたらどうやら撮影禁止だったらしい。まあ撮ってしまったものはしょうがないので、載せておく。

 ここのキリスト教徒は僻地に隠れ住んでいたので、カッパドキア式十字架等、次第に独自のモチーフなどを駆使するようになった。フレスコ画の保存状態は結構良かったが、近年のイスラム原理主義による破壊で(オルハンによる)、目の部分が削られている。また落書きも多い。日本のこの種の落書きと比べて、やっている結果は一緒だけど、業としてこちらのが深い。日本のは唯のバカである。やはりここはイスラムの国だ。


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